行政書士法人
田村環境事務所
Tamura Environmental Office
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「請負」とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約です。
この請負と類似の概念としては、雇用(雇傭)や委任があります。
雇用(雇傭)は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約束し、相手方がこれに対して報酬を支払うことを約束する契約であり、仕事の完成を負担するものではありません。
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託する契約であって、仕事の完成を内容とする請負とは異なり、仕事の完成がなくても履行の割合に応じて報酬を請求することができるものとされています。
現実に締結される契約は、建設工事の完成を目的とするものであっても、必ずしも請負という名義を用いていない場合もあります。
建設業法では、脱法行為を防ぐ目的で、委託、雇用(雇傭)、委任その他のいかなる名義を用いるものであろうと、実質的に報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約はすべて建設工事の請負契約とみなして、この法律を適用することとしています。
なお、売買契約と請負契約の混合契約と考えられるいわゆる制作物供給契約により、建設工事の完成を約束する場合は、建設工事の請負契約に該当すると解釈されています。
建設業法では、
建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して工事内容等14の事項を書面に記載して、署名又は決め押印して相互に交換しなければならないとされております。
請負契約の内容でこれら14の事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印して相互交換しなければならないとされています。
書面による契約書の作成についての例外は一切認められておらず、例えば少額で簡単な追加工事であったとしても、変更契約書の作成が必要です。
請負契約を、注文書・請書による場合には、次の要件を満たした、基本契約書又は基本契約約款を作成することが必要です。
※ 契約書記載事項の14項目は必ず記載する必要があります。
1. 当事者間で基本契約書を締結したうえで、具体的な取引については注文書及び請書の交換とする場合(注文書・請書+基本契約書)
① 注文書及び請書には、工事内容、請負代金額、工期その他必要な事項を記載
② 基本契約書には、注文書及び請書に記載された事項以外の建設業法第19条の規定項目に該当する事項その他必要な事項を記載し、当事者の署名又は記名
③ 押印をして相互に交付
④ 注文書及び請書には、注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことを明記
⑤ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名押印
2. 注文書及び請書の交換のみによる場合(注文書・請書+基本契約約款)
① 注文書及び請書にそれぞれに、同内容の契約約款を添付又は印刷
② 注文書及び請書には、工事内容、請負代金額、工期その他必要な事項を記載
③ 契約約款には、注文書及び請書に記載された事項以外の建設業法第19条の規定項目に該当する事項その他必要な事項を記載
④ 注文者又は請書と契約約款が複数枚に及ぶ場合には割印
⑤ 注文書及び請書には、注文書及び請書に記載されている事項以外の事項について契約約款の定めによるべきことを明記
⑥ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名押印
広く市販されている契約書式であっても、必ずしも建設業法において規定されている事項が契約条項に反映されているわけではないため、内容を確認して適切な契約書を用いることが必要です。
国土交通省中央建設業審議会が作成し、実施を勧告している民間工事標準請負契約約款(甲)・(乙)、建設工事標準下請契約約款等のいわゆる標準約款がありますので、それらを活用・参考にして建設業法に違反しない契約書を用いて契約をしましょう。
・・・建設業法が建設工事請負契約の締結に立って要請している趣旨を踏まえたものが、【公共工事標準請負契約約款】、【民間工事標準請負契約約款(甲)・(乙)】、【建設工事標準下請契約約款】等の標準請負契約約款です。
☆ 標準請負契約約款の平成29年改正について・・・
・ 公共工事・・・請負代金内訳書に、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明記するものとされました。
・・・社会保険の加入について下請負人が未加入の場合に、元請負人に違約罰を課すこと等が規定されました。
・・・破産管財人が、契約解除を申し出た場合でも公共工事発注者が違約金を請求できるようになりました。
・ 民間工事・・・請負代金内訳書に、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明示するものとされました。
・ 建設工事(下請)・・・請負代金内訳書に、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明示するものとされました。
労働者派遣は、自己の雇用する労働者を、その雇用関係のもとに、かつ、他人の指揮命令を受けて、他人のために労働に従事させること。と規定されています。
また、これを業として行う労働者派遣事業について禁止される業務が定められており、その禁止対象業務として、以下が掲げられています。
◯ 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)
したがって、建設工事現場への労務提供が建設工事の請負計契約に依らずに行われる場合には、労働者派遣法違反となるおそれがあります。
建設機械のリース契約でも、オペレーターが行う行為は建設工事の完成を目的とした行為と考えられ、建設工事の請負契約に該当します。
また、この場合のオペレーターが労働者派遣法で禁止されている建設業務への労働者派遣に該当する可能性があるため、建設業法に基づく請負契約を締結することが必要です。
元請負人とは、下請契約における注文者で建設業者であるものをいいます。
下請負人とは、下請規約における請負人をいいます。
下請契約とは、建設工事を他の者から請け負った建設業を営む者と他の建設業を営む者の間で締結される請負契約をいいます。
したがって、一次の下請業者も二次の下請業者との関係では元請負人の立場にたち、二次と三次、三次と四次との間も同様です。
建設業法で元請負人として規制が適用されるのは、許可業者だけですが、許可業者でない者も下請契約の注文者としての規制は適用されます。
◯ 発注者と注文者の違い ●
発注者は、建設工事の注文者のうち他の者から請け負ったものを除くと定義されており、建設工事の最初の注文者(いわゆる施主)です。
注文者は、民法上の注文者をいい、下請関係におけるものも含まれます。
※ 発注者・元請負人・下請負人については、建設業法での定義と通称や契約上の名称とは異なっていますので注意が必要です。